陥りやすいピットフォール ガイドラインの罠
1月も10日を過ぎ、お正月気分も抜けた今日この頃です。
この時期になると気になるのは「センター試験」と寒波の襲来。
例年の如くこの冬一番の寒さが週末日本列島全体を襲う予定ですが、すでに今日から熊本はもの凄く寒くなっています。(北国の方からみたらたいしたことないかもしれませんが)。
センター試験がある1月14日には更に零下2度まで下がるので、受験生の方々は大変です。
と、前ぶりとは全然関係ないのですが、長い間臨床医をしているといろんな事に気づきます。
その中の一つに、〝経験は大事!!〟という当たり前のような金言があります。
この〝経験〟というのは。
〝何年医者をやっているのか〟ではなく〝どれだけ多くの症例を経験してきたか?〟ということです。
臨床の現場で大切なのはガイドラインよりむしろ
〝あ、そう言えばこんなのがあった!〟という経験と発想なのです。
そういう意味では、より多くの問題をやっている者が勝ち!の受験とも似ていますネ。
もっとも、知識あっての経験ですので、ベースとなる知識があるのは当たり前です。
昔と異なり、多くの疾患のガイドラインのある時代ですので、ある意味診療は楽になりました。
けれども、全てがガイドライン通りにいくわけでは決してありません。
自分の目と耳と知識と経験でしっかりと判断する必要があります。
臨床の基本ですが、けっこう難しいことです。
自分の専門分野では、こうしたことが自然に出来ていきますが、そうでない場合もあります。
ましてまだ経験が十分でない分野では、時として誤った判断をしそうになります。
最近そうした経験をしました。
一人は高齢の女性、CLI(重症虚血肢)でしたがまだABIがよく、3週後の再診としました。
3週間後診察してみると、ABIが急降下、慌てて基幹病院へ送りました。
幸い切断となることはありませんでしたが、あと少しで危ないところでした。
〝怪しい〟と思ったのであれば、3週後ではなくて1週後にすべきだったのです。
もう一人は同じCLIの男性、こちらはSPP(皮膚灌流圧)は23と低く踵部の壊死がありました。
翌日、基幹病院受診時のSPP32と少し改善し同院で経過観察となりました。
神戸分類はタイプⅡで本来創傷の管理には注意が必要ですが、同日外科的な創傷治療がなされています。
これは従来のFontaine分類やRutherford分類だけでは正解かもしれませんが、神戸分類では違います。
実臨床に基づいた分類だからです。
上記の二つの症例共に今後どうなっていくかは判りません。
けれども実臨床の世界では、〝結果オーライ〟ではいけないのです。
まして下肢救済は生命予後に関わりますから慎重でなくてはいけません。
十分な知識と経験に基づいた的確な判断が必要なのです。
急に寒くなった午後6時の熊本を往診に向かいながらこんなことを考えました。