医療麻薬について知ろう
6月18日に医療用麻薬の海外持ち出し持ち込みに注意!というタイトルで、〝トヨタのオキシコドン騒動〟について書きました。
このオキシコドンについては騒ぎの後、あちこちで書かれていますが、ハーバード大学の大西睦子先生の書かれたものが判りやすいでしょう。
参照:トヨタ役員逮捕「オキシコドン」報道に対する米国での反応
ただ、大西睦子先生は日本を離れてだいぶ経ってらっしゃるので、現在の日本の状況について書いてみます。
まず、現在がん以外の強い疼痛(非がん性慢性疼痛)に日本で認められている麻薬には以下のものがあります。
① リン酸コデイン 、塩酸モルヒネ : 以前から認可 麻薬免許必要
② デュロテップMTパッチ : 2010年認可 麻薬免許 + e-laearning 必要
③ ワンデュロパッチ : 2011年認可 麻薬免許 + e-learning 必要
④ トラムセット : 2011年認可
⑤ ノルスパンテープ : 2011年認可 e-learning必要
*①〜④は1ヶ月処方可能、⑤は2週まで
医療用麻薬にも麻薬免許のいるものといらないものがあります。
面白いですね。
また、貼付剤はすべてe-learningが必要です。
*麻薬免許は基本的に診断書(精神機能の障害・麻薬及び覚せい剤の中毒がない)があれば申請でOKです。
さて、医療用麻薬について理解して頂くには、まずWHOの除痛ラダーを知ることです。
さて、上記の①〜⑤のうちリン酸コデインやトラムセットはステップ2で、②③⑤はステップ3です。
話題のオキシコドンは量によってステップ2と3の両方に位置します。
逆に麻薬免許のいらないノルスパンテープはステップ3です。
不思議ですね!
ステップ1の薬剤には従来の消炎鎮痛剤や抗うつ剤や安定剤などが含まれます。
日本は以前はほとんどの医師がこのステップ1の薬剤のみを使用してきました。
でも、ステップ2のトラムセットやステップ3のノルスパンテープは麻薬免許なしでも使用できます。
非常に垣根が低くなったのです。
さて、オキシコドンはというとステップ2と3に位置するので、実はそんなに危険な薬剤ではありません。
ただし適応は癌性疼痛のみです。
オキシコドンは乱用が危惧される薬剤ですので、通常の非がん性慢性疼痛には日本では認められていません。
ここが、今回の問題点の一つなのです。
こうしたオピオイド性の薬剤は慎重に使用する必要があります。WHOもそれを推奨しています。
また、医療用麻薬は適正使用すれば中毒性がないことも判っています。
医療麻薬は今や日本でも特殊な薬剤ではありません。
日本では癌性疼痛にしか処方できないオキシコドンは、私も2名の患者さんに処方しています。
特別な医療機関しか処方できない薬剤ではないのです。
今回のオキシコドン騒動は残念な結果になりましたが、多くの方が医療用麻薬を知るよい機会でした。
医療用麻薬は適正使用すれば、とても有効な薬剤です。
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