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トランサミンは血栓症を誘発するか?

EBMとは勿論、文献的吟味に経験も加味して考えるものです

非常にコアな話題で一般の方にはぴんとこない報告ですが、個人的にはとても興味深いNEWSが出ました。
これは、9月26日の日経メディカルオンラインに掲載されたものです。
トラネキサム酸は低リスクの外傷性出血患者にも有益と題されたこの記事は、BMJ誌電子版に2012年9月11日掲載されました。
CRASH-2試験で、成人の外傷性出血患者に外傷から3時間以内にトラネキサム酸を投与すると、全死因死亡リスクが有意に減少すること、有害な血栓イベントの増加は見られないことが示されて以来、世界各国で外傷患者の管理法にトラネキサム酸が組み込まれるようになった。一般には、最も死亡リスクの高い外傷患者が適応となっているが、そうした患者よりはるかに多い、死亡リスクの低い患者も、トラネキサム酸の利益を受けられる可能性がある。

詳細はLink先を読んで頂くとして、外科医としては感慨深いものがあります。

私が平成9年にクリティカルパスを始めた頃、EBM(Evidence-Based Medicine)の概念が導入されました。
それは、抗生剤の予防投与に始まり、すべての薬剤のEvidenceに基づく投与におよびました。
その中で、薬剤部からやり玉に挙げられたのが、術後のトランサミン使用です。
それまでルーティンで術後投与していたトランサミンが有効だというエビデンスがなく、当時発表された論文で逆に血栓症を誘発しやすいと指摘されたのです。

『トランサミンを使用する事によるベネフィットを提示してください』
そう言われても、臨床的には非常に困難です。
もともと長い間、伝統的に使用されていた経緯も有り、私たちは経験的に薬剤は有益だと感じながら、薬剤部に押し切られる形で使用を中止しました。
同様にエビデンスがないという理由で、術後や外傷後の使用を中止したものにダーゼンがあります。
(その後、ダーゼンは市場から消えてしまいました)

今回の研究はN = 13,273人という非常に信頼性の高いものです。
勿論、乱用を奨励しているわけではありません。
こうした薬剤の効果の見直しは、
患者にとって有益なだけでなく医師の経験を裏付ける素晴らしいものだと思います。

EBM・・・
本当に奥が深いですね。




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by ccr-net | 2012-09-26 07:36 | 医療
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