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痛みの治療は誰の仕事?

整形外科の役割はどこにある

先週末、東京へ痛みのワークショップに行ってきました。
『整形外科医における神経障害性疼痛の実践的アプローチ』と題されたこのプログラム、
〝はるばる休みの日(建国記念日)に出かけてきてよかった〟と実感させる素晴らしいものでした。
6名の先生方の講演とディスカッションからなるこのプログラム、それぞれ有意義でしたが、
そのなかで山口大学教授の田口敏彦先生の講演は素晴らしいものでした。
まず、1986年国際疼痛学会の提唱した痛みの定義についてのお話。
An unpleasant sensory and emotional experience associated with actual or potential tissue damage, or described in terms of such damage.
(痛みとは)不快な感覚性・情動性体験であり、それには組織損傷を伴うものと、そのような損傷があるように表現されるものがある。
そして侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛の違いについて、判りやすいアニメーションを使っての説明。
痛みの機序やそれに対応するにはどういう薬剤を使うべきか、非常に判りやすくお話をいただきました。
疼痛の機序と治療についてはあるていど理解していた私ですが、まさに目が覚める想いでした。

けれども、もっとも心打たれたのは実は大阪南医療センター病院長の米延策雄先生のお話です。
「痛み止めを出しておきましょうか?」
「それは病気を治す治療ですか?」
「いいえ、直接には炎症を抑え、痛みを和らげる作用を果たす薬です」
「では要りません。胃を悪くすることもあるので」
運動器の傷みを訴える患者の診療でありそうな会話です。
ここに診療側にも、受療側にも、対症療法は根治療法に劣り、鎮痛剤は副作用が大きく、それなら痛みを我慢するとの考え方が浸透していることが窺われます。
痛みを軽減することから始まった医術が科学に基盤を置く医学へと発展するにつれ、原因病理の解消を通じての治療が本流となりました。
そして、対症療法は劣位に置かれるようになりました。

米延先生のお話は、「いかに痛みを軽減することが大切な事か」「その中で整形外科医の果たす役割は何か?」ということに続いていきます。
ご講演でも、座長としてのお話でも度々先生が口にされたのは以下の言葉です。
『今、整形外科医は忙しく多くの患者の診療に追われている。
しかしだからといって、痛みの問題をおろそかにしてはいけない。
これからの10年、私たちは痛みに対するきちんとした実践的研究を続け、現状に留まらないことが大切だ。
痛みの治療、それをペインクリニックを標榜する麻酔科医や内科医がおこなうのか、あるいは私たち整形外科医がおこなうのか、今が大きな分岐点なのです。』

私たち整形外科医は、本来痛みのプロであるはずです。
理由は簡単、私たちにはいくつもの武器があるからです。
正確な診断、的確な薬物療法、ブロックを含むペインクリニック的治療、電気やレーザー治療などの消炎鎮痛、そしてリハビリテーション・・・これだけいくつもの選択肢を持つ診療科は他にはありません。
けれども多くの整形外科医はあまりにも薬物療法に無理解で、漫然としたルーティンの治療を続けています。

『整形に行っても治らないから、整骨院に行った。』
『ペインクリニックに行ったらよくなった』
私たちが日常よく耳にする会話です。
この言葉を私たちは漫然と聞き流していないでしょうか?
ライバルは整骨院でありカイロプラクターでありペインクリニックなのです。
その自覚が私たち整形外科医にあるでしょうか?
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私たちはメニューの豊富なレストランです。
多くのレシピの中からあなたの症状にあった料理を提供します。
もちろんお味は抜群・・・
そんなお店が他店に負けるはずはありません。

『先生、痛みをとるのはその場しのぎでしょ?』
『いいえ、痛みを取ることこそがあなたにとっての最善の治療であり根本的治療なのです』
今日の私は患者さんとそんな会話を交わしています。

整形外科医は痛みの治療のプロです、
あなたの治療、誰にも負けるはずがありません。



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by ccr-net | 2012-02-14 22:05 | 整形外科
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