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本当にあった怖い話 その2

魔がさす
もう随分前のこと、
私は当時大学病院に勤めていて、週に一度山間にある公立病院に診療に出かけていた。
片道1時間半の遠路で当初送迎がついていたが、すぐに堅苦しくいやになり自分の車で出勤するようになった。
初めの頃は、物珍しく楽しい通勤であったが、そのうち見慣れた道となり退屈な時間になった。
そんな夏のある日、珍しく早く診療が終わった。
病院の表に出るとまだ6時前、あたりは明るい。
いつもの道で帰路についたが、少し寄り道をしたくなった。
ちょうど目の前に大きな山があり、そちらのほうに道が伸びている。
車2台が十分にすれ違える立派な舗装路だ。
“あっちに寄ってみようか・・・”

魔が差した。

見慣れない風景と夕方の涼しげな風に心が弾んだ。
道は一直線に山に伸びている。
“どこかで左に曲がれば、元の道に戻れるか・・・”

そのうち徐々に道が狭くなってきた。
いつの間にかあたりは鬱蒼とした森になっている。
舗装路も途絶えた。

車は四駆・・・悪路には自信がある。
そのうち、道はどんどん細くなり、Uターンもできなくなった。
あたりは薄暗い。
“これは困った”
そう思って車を進めていると、前方左に小さな広場が見えてきた。
Uターンには丁度良い。
そう思って車を止めると、広場の中に小さな人影があった。
大きさからして子供だろうか、後ろ向きで顔は見えない。
車の向きを変えるには邪魔になる。
“うーん、次で方向を変えよう”

また、魔が差した。

車をどんどん進めていくと、道は悪路になった。
辺りはもう真っ暗だ。
徐々に不安になってきた。
もう、戻ることはできない。
すると、急に下り坂になってきた。
やれやれ、ようやく戻れる・・・

どんどん進んでいく。
道はもう悪路というより沢に近い、あちこちに大きな岩が転がっている。
これは、困った。
そう思って、車から降りた。
これは既に道ではない・・・雨期の濁流が造った沢か古い工事用の道路だろう。
再び車に乗り少しずつ少しずつ降りていった。
すると少し先を車のヘッドライトが横切ったような気がした。
ライトを通してよくみると少し先に舗装路がある。
どうやら道が先で交わっているようだ。
ほっとした・・・

心に隙が出来た。

あと少しで、普通の道に辿り着く。
そう思って、再び車を動かした。
5mほど進んだ。
ライトを通して見る道は平坦だ。
でもどこかおかしい・・・
さっき降りたとき見た道はひどい悪路であちこちに穴が開いていなかったか?

怪しいぞ・・・自分の中の誰かが呟いた。
なんだか、怪しいぞ!

急に車にいるのが怖くなった。
車にいてはいけない・・・すぐに降りよう。
そう思うと、いても立ってもいられなくなった。
私は車を捨てた。
案の定、下はひどい悪路だ。
気をつけながら沢のような悪路を降りていった。
さっきはすぐ近くに見えた道路はひどく遠かった。

30分ほど経ったろうか、ようやく舗装路に降り立った。
きちんとした道路に少しほっとした。
標識もある。
月は明るいが、周りは鬱蒼とした木立で麓の街は全く見えない。
取り敢えず下りに向かって歩き出した。
誰もいない山の中に自分の靴音だけが響く。
その内に、自分の足音以外に何か音がするのに気づいた。

サクサクサク・・・

音がする。
なんだ?

振り返ってみたら?
誰かが言った気がした。
振り返りそうになった。
いけない・・・自分の中の何かが止めた。

振り返ってはいけない!

私は一目散に駆けだした。
急に恐怖で一杯になった。
走っては止まり、走っては止まり・・・
小一時間ほどで、麓の街につくと私はタクシーを拾い帰宅した。

翌日、大学の医局でこの話をすると皆が笑った。
山の中に車を捨ててくるなど信じられない!と言われた。
確かにそうだ。
でも、あの恐怖は誰にも判らない。

その日の午後、友人二人と私は車をとりに再び山に戻った。
昼間の道は明るく、恐怖の欠片もない。
すぐに私が降り立った道についた。
みるとそこはひどい沢だった。
“先生、こんなところに着いたんですか?”あきれて友人が言った。
“本当にひどいな”といいながら3人で沢を登った。
車は道路から20分ほどのところにあった。

“これは酷い!”私たちは唖然とした。
私の車の前には大きなクレパスがあり、そのまま進んでいたら間違いなく車は落下していた。
では、あのとき私の目の前に広がった平坦な道は何だったのか?

その後、私の車は苦労して救出された。
帰る途中、友人のTさんが口を開いた。
『先生、あやうく死んでましたね』
『そうだね』
『ところで一つ腑に落ちないことがあるんですが・・・』
『なあに?』
『途中の広場にいた子供・・・近くに人家はありましたか?』

周りは鬱蒼とした森、
人家などはない・・・


魔が差す・・・

それは人の心に魔が入り込むこと、

あなたは、経験がありますか?


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by ccr-net | 2010-07-29 22:16 | その他
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