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医療における成果主義

プロフェッショナルの条件:P・F. ドラッカーから考える医療における成果主義の是非

今日は休日ですので午後から街へ食事に出かけ、書店で本を沢山購入しました(クリニック分)。
小さい頃から書店が好きで、沢山本があるとなんだか幸せになります。
そうして本をあれこれ眺めていると、ハーバード・ビジネス・レビューが目にとまりました。
今月号は、P・F. ドラッカーの特集で彼のHBR全論文が載っています。
有名な『プロフェッショナルの条件』もその中にあるかと思えば、ありません。
『プロフェッショナルの条件』は、数多くあるドラッカーの論文の中から自己マネージメントについて書かれた論文を中心にまとめたものだからです。

で、『プロフェッショナルの条件』といえば成果主義もその一つですが、この本を読むといかに日本の成果主義が矮小化されて導入されているか、よく理解できます。
と長い前振りでしたが、『医療における成果主義』について考えてみました。

『医療における成果主義』には大きく分けると2つあります。
一つは“医療施設全体としてのアウトカム”、もう一つは“医療者個人のアウトカム”です。

“医療施設全体としてのアウトカム”には臨床アウトカム(臨床成績)・在院日数などがあります。
このどちらも一見客観的指数のようですが、実は少しも客観的ではありません。
まず、在院日数について考えてみましょう。
現在、急性期特定機能病院では、在院日数は2週を切っており先端病院ではすでに10日を切っています。
これ、一見客観的ですね。
でも実は全く客観的数字ではありません。
平均在院日数は、“その施設にいる期間”であって“自宅退院までの期間”ではないからです。
早く転院させれば、在院日数は減少する・・・・ところてん式に押し出していけば、どんどん短くなります。
そもそも参考にした欧米の在院日数自体が自宅退院までの日数ではありません。
欧米は入院費が非常に高いので、退院後サテライトホテルやナーシングホームなどの施設に移るのです。
平均在院日数の短縮は、あくまでも入院後検査や無駄な空き時間を短縮したコンパクトな医療で評価されるべきものですから、現在のような単純な日数の比較はほぼ無意味です。

それでは、臨床アウトカム(臨床成績)はどうでしょうか?
これも一概には比較は難しいです。
一見同じ症例でも、合併症が多く全身状態が悪かったり重傷の患者の治療成績は当然良くないからです。
誤解をなさらないように、これはあくまでも医療保険や統計レベルの話で学会レベルではありません。
こうした部分は統計は勿論、医療保険では評価できないからです。

いいアウトカムを得ることは簡単です。
簡単な症例を選び、難しい症例は避けることです。
これって、医療の原則に反しませんか?

現在リハビリテーションの世界にアウトカムを求める動きがでてきました。
手術成績でさえアウトカムの評価が難しいのに、どうやってリハの世界にアウトカムの客観的評価を持ち込むのでしょう?
FIMの改善度? %FIM?
馬鹿げています。
急性期や軽傷者はともかく、慢性期や高齢者のリハビリテーションではFIM改善が実際のADLとパラレルでないのは、リハビリテーション関係者であれば誰でも知っていることです。

長くなりました。
“医療者個人のアウトカム”と『本来、医療における成果とは何なのか』については、次回書きたいと思います。

今回はなんだか難しい話になりました。
でも医療にとってはとても大切なことなのです。

医療における成果主義_b0102247_2322825.jpg

経営学の巨人  P・F. ドラッカー

2005年 95歳で永眠しました


“ドラッカー 365の金言”に代表される名言集は、とても素敵です。


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by ccr-net | 2010-05-30 23:27 | 医療
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