SENDA MEDICAL CLINIC BLOG

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がんと向き合うことの難しさ

医療者の言葉の重さと責任

昨日、15年以上おつきあいしている患者様から癌治療についてのご相談を受けました。
数年前に癌の手術を受け局所再発はありませんが、現在肺への転移と戦っておられます。
化学療法の効果に限界があり、今回外科的手術を担当医から提案されました。

『その先生が言われる手術の確率が高くないので私は受けたくない』
なかば吐き捨てるように患者様がおっしゃいました。
『手術受けなければ1年だそうです』
言葉は続きます。
『先生、私は疲れちゃいました』

長いおつきあいの方だけに、私の家族のような方です。
この方とは、頸椎の手術を乗り切り、癌も心筋梗塞も乗り越えてきました。
『そうですか、がんばってきましたもんね。手術についてはどのくらいの確率と言われましたか?』
『先生、聞いてください。確率が80%なんですよ・・・』
『80%・・・ですか?』
『そうなんです』
私は、ほっとしました。
『80%という数字はとてもよい数字ですよ。これ以上の数字は転移性腫瘍の手術ではありません』
『本当ですか?!』
『癌の転移の手術なので執刀医はこれ以上の数字は提示できません。どうして良くないと思われたんですか?』
『怖い顔をして、これ以上は保証できないと言われるから、てっきりとても悪いのだと思いました』

なるほど・・・と思いました。
癌の最前線で戦っている医師は、いつも厳しい現実と向き合いぎりぎりの選択をしています。
当然、言葉も厳しいものになります・・・甘い話はできないのです。

転移がみつかりこの1年・・・この方はしっかり癌と向き合いがんばってこられました。
担当医の言葉に嘘はありません。
治療の現実にきちんと向き合い、厳しい言葉をかけることが必要なのです。
でも、その言葉の中にほんの少しだけ逃げ場がほしかった、優しいゆとりがほしかった、
それがこの患者様の偽らない気持ちです。

手術の成功率80%というとても高い数字は、医療者としては精一杯の提示です。
でも、一生懸命戦い疲れているこの方には、重い数字だったのかもしれません。

私たち医療者の何気ない一言、
自信を持って発したはずの一言が、
時として人を傷つけ、追い込んでしまうことがあります。

私たちのひとつひとつの言葉の重み・・・
それをあらためて実感しました。

このあと十分にお話しし心のゆとりを取り戻され、最後は笑顔でお帰りになりました。
本日お電話を頂き、手術をお受けになるとのこと・・・これが長いおつきあいの成果です。
手術の手配は私に任せたいとのことでしたので、月曜日に担当医と相談する予定です。

がんと向き合う・・・
とても大切なことですが、とても難しいことでもあります。

AstraZenecaが素敵なサイトを作っています。
がんになっても
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希望とあたりまえの生活を・・・

とても大切なことです。


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by ccr-net | 2010-04-03 22:28 | 医療 | Trackback
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