SENDA MEDICAL CLINIC BLOG

ccrnet.exblog.jp ブログトップ | ログイン

断らない救急

なんでうちのクリニックに?!

昨日、午前中の診療がごったがえしているときに1本の電話が救急隊から入りました。
まだ若い女性の過換気症候群で発作をおこしており、当院へ搬送を希望されているとのことです。
『困ったなあ』というのが最初に浮かびました。
看護師長に尋ねますと『土曜日でナースの数が足りません』と答えが返ってきました。
土曜日のクリニックは常勤ナースのみで成り立っており6名体制、少なくはないのですが現状で確かに手の空いているナースはいません。
奥の点滴ベッドは一杯で、エコーネス(安楽椅子)が2つ空いているだけです。
電子カルテで見てみますと過去に一度だけ受診歴があります。
この間10秒くらいでしょうか?
『今、ベッドが全く空いていないので受け入れが難しいです』
私がそう答えると、救急隊の方はちょっといらついた感じで
『今はまだ精神状態が不安定ですが、呼吸数は24と落ち着いているんですがね、先生がそういわれるなら他所をあたります』と言われました。
その瞬間、私は『いえ、済みませんでした。どうぞうちへ運んで下さい』と答えました。
あぶないところでした。
私は、医師の本分を忘れるところでした。
こんな軽症(?)の方だからこそ、うちのような零細診療所が受け入れる必要があるのです。
『何分でこられますか?』
『10分です』
『わかりました、お待ちしています』
すぐに、ナースに指示をだしました。
“基本はエアバッグ、必要ならリザーバー付きのマスクで酸素1リットル、セゼーション(鎮静剤)は様子をみてから指示、クリニックのライン(入り口からどちらの廊下を通すか)は一任するから決めておくこと”
これだけの指示をだすと、ナース6名中5名は救急病院出身ですのであとは自然に動いていきます。
予定通り10分後救急車が到着し、結局鎮静剤を使用し患者様は落ち着かれ1時間後に帰宅されました。
(鎮静剤の内服もだしました)
救急搬入時、救急隊の方と交わした言葉。
『すみませんね先生、忙しいのに』
『とんでもない、いつもお世話になっていますから』
そう私がお答えすると、救急隊の方はにこっと笑って帰っていかれました。

断らない救急・・・
私が前の病院で徹底的に叩き込まれた理念です。
どんなに忙しくても、最善がつくせると判断するなら必ず受け入れる、
逆に最善でなければ最善を探す、
それが我々医療者の使命です。

どんなに忙しくとも自分たちが最善がつくせると判断すれば、受け入れる、
逆に一見受け入れ可能でも、最善が尽くせないと判断すれば最善を探すか、次善をおこなう。
例えば、既に緊急手術を行っているときに、開放骨折の連絡が入ることがあります。
手術を中座できる、あるいは新たに投入できる人員がない場合、他の救急病院に直接お電話をいれます。
『こっちで今手一杯だから、そっちで対応できますか?』
逆もあります、
『今、空いてるからどうぞこっちに回して下さい』
こうした連絡や意思疎通が病院間ですぐにできるところが、熊本の良いところです。
お互いに同じ教室の先輩だったり後輩だったり顔が見えるからできるのです。
救急隊もどこに搬送してよいか右往左往することもありません。

断らない救急とは、なんでも無条件に受け入れる救急ではありません。
受け入れるからには最善を尽くさなければならない責任と使命があるのです。

以前の病院でオンコール中(自宅待機)、午後11時頃入浴中にコールがかかったことがありました。
内容は、交通事故のむち打ち症で軽症とのこと、私はゆっくり入浴をすませさっぱりして救急にでかけました。
すると、当日の救急責任者の先生(当時の循環器部長)からこっぴどく叱られました。
『千田くん、呼ばれてから来るまでに40分かかってるじゃないか!』
当時の病院ルールではオンコールから30分以内という暗黙の了解がありました。
ちなみに私の住まいから病院まで車で20分の距離です。
『すみません、風呂にいっていました』
『あのね君は軽い事故だから大丈夫と思ったんだろうが、見てるのはこの私。素人だよ、あてにならんだろう』
自分のことを“素人”という循環器部長の言葉に私は目が覚める思いでした。
私のなかに“たかがむち打ち”という思いがあったからです。
今は違うかもしれませんが、当時の病院は全体当直1名、循環器・消化器・脳神経外科それぞれの専門医が各1名の常時4名体制です。
どんなに軽症でも、最善をつくす、それが大切です。
この部長には、その後もう一度叱られたことがあります。
私の外来初診の方で、腰痛でこられたのですが解離性大動脈瘤の可能性が高く、循環器外来にすぐにご紹介したケースです。
直接お電話でお話したのですが、後で“自分が診察するまで2時間かかった”と叱責されました。
お電話で緊急性が伝わらなかったわけです。
整形外来の看護師からは“先生、電話したのにね”と言われましたが、直接行くべきでした。
(整形外来と循環器外来は1分の距離でした)

b0102247_9404126.jpg
いつのまにか忘れかけていた救急の心、
常に最善をつくすのは今も変わりません。

なんでうちに?
それは、患者様が希望されるからです。

ちなみに当院は無床診療所で、
勿論救急指定病院でもありません。

にほんブログ村 病気ブログ 医療・医者へ
by ccr-net | 2010-02-14 09:43 | 医療 | Trackback
トラックバックURL : https://ccrnet.exblog.jp/tb/12838213
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
line

医療と健康について


by ccr-net
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30