SENDA MEDICAL CLINIC BLOG

ccrnet.exblog.jp ブログトップ | ログイン

日本の医療の未来は何色?

もうすでにあちこちで取り上げられていることですが、先日発表された経済協力開発機構(OECD)のヘルスデータ2007をみると日本の医療の現実がはっきりとします。

1)人口1000人当たりの医師数 
日本は30カ国中27位の2.0人で、OECD平均の3.0人を大きく下回っています。
2)1年間に医師の診察を受ける回数(国民1人当たり)
日本は13.8回(04年)で、データがある28カ国中で最多
3)1人当たり医療費
日本は2358ドル=約28万円相当=(購買力平価換算)で30カ国中19位、先進7カ国中最低。
4)人口100万人当たりのCT設置数
日本は92.6台(02年)で2位以下に大差をつけています。MRIも同様に日本が首位です。
5)乳がんの発見に役立つマンモグラフィーを過去1年間に受診した50〜69歳の女性
日本ではわずか4・1%(04 年)で、データがある25カ国中、最低。

さて、このデータからなにを判断すれば良いのでしょう?
一つは日本は数年前に厚生労働省がいっていた医師過剰とはかけはなれた状態であること、もう一つはMRIなどの高額器械がとんでもなく多い割に日本の医療費は恐ろしく廉価であること、そしてその結果として国民の受診回数が多いことです。
ヘルスデータ2007をよくみてみると、OECDのすべての国の対GNP医療費が右肩上がりで増加しているのがよく判ります。それは、人口の高齢化ということを考えると不可避ともいえます。こうした情勢の中で、日本の医療費は医療改革の名のもとに比較的緩やかな上昇となっています。ものすごい勢いで上昇している英国とは対照的とも言えますが、英国がサッチャー時代の医療破壊から立ち直るために払った代償はそれほど大きいといえます。
今、地方の病院や救急病院から医師が消えている背景にはこうした現実が有ることをまずしらなければいけません。
私は6年前まで急性期特定機能病院の整形外科部長の職に有りました。年間250例の脊椎外科手術をこなし病院の滞在時間は日に15時間を超え36時間休みなしで働いたことも数多く有ります。そうした私の給与は一流銀行の課長職に及びません。
管理職で年俸制ですから、時間外なども当然つきません。
若い研修医では、寝るまもないほど働いて1流企業の大卒初任給におよばないのが現実です。
それでは、私達はなぜ働いているのでしょう?
それは、きれい事ではなく仕事の達成感と使命感からです。

そうした救急医(あるいは勤務医)を医療の現場から遠ざけて行ったのは、現在の医療政策に有ります。
私達の頃で、すでに医療の現場は限界にありました。その後おこなわれた医療改革の名のもとの医療費の削減は病院の経営を圧迫し、そのしわ寄せは医師をはじめとした医療スタッフにおよびました。結果として、医療スタッフはより医療のやりやすい環境へと移っていきました・・・地方の病院の崩壊です。
現在の医療状況は、誰が考えても容易に予想されることです。
次に起こってくるのは何でしょう?
それは地域医療を支えてきた開業医(かかりつけ医)の淘汰です。
今後多くの診療所でベッドが消え(入院が廃止され)数多くの医療難民が出てくることでしょう。
医療から介護へ・・・これが政府が唱える道筋です。
けれども道は実はないのです。介護は文字通りどれくらい人の手を必要とするかという尺度で図られるもので、医療とは基本的に異なるものです。
現在医療サービスを受けている多くの人が実は介護保健サービスに移行できないことは、介護に携わる関係者には広く知られています(私は介護保険・障害者保険認定審査委員もしています)。障害者医療についても同じことが言えます。
脳梗塞でひどい言語障害・失算があるかたが、発症後6ヶ月を過ぎた今、医療でも介護でもリハビリテーションを受けることができない現実があるのです(医療でのリハビリの継続性があるかたは別です)。
私自身は、超急性期医療から現在の開業医(ホームドクター→在宅医療)へと大きくかわりましたが、どちらもとてもやりがいのある仕事で、天職だと考えています。
けれども、こうした医療改革(医療破壊)の続く中、どこまで現在のスタイルで医療の提供ができるのか時々不安になります。

現在の日本の医療が決して最善だとは思っていません。
CT・MRIが小さな地方都市に数十台もあるのはやはり異常でしょう・・・
でも、すくなくとも日本の医療は少ないコストの中で世界のトップレベルの医療をおこなってきました。日本人の平均寿命が、女性世界第一位、男性第二位なのはまぎれもない事実です。

日本の医療は今壊れかけています。
一度壊してしまえば、それを再建するのが非常に困難なことは
英国の例をみても明らかです。

今有るものをより良い形で、子供たちの世代に残していきたい。
それが、私の希望です。

日本の医療の未来は果たして何色でしょうか?

日本の医療の未来は何色?_b0102247_22333017.gif

by ccr-net | 2007-08-06 22:33 | 医療
line

医療と健康について


by ccr-net
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31