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慢性腰痛に対する脊椎固定術の効果は?

定義のはっきりしない研究に疑問
3月3日のヘルスデージャパンに脊椎固定術を受けた慢性腰痛患者では予後が不良というセンセーショナルな記事が出ました。
これは、 Spine(Feb. 15, 2011)に掲載されたものです。
(Spineは脊椎外科の学会誌としてはきわめて権威ある雑誌です)
脊椎外科をしていたものとしては、ちょっとショッキングな記事です。
(英文はこちら
慢性腰痛の治療のために脊椎固定術を受けた患者は、非外科的治療を受けた患者に比べて永久(永続)的な身体障害に至る比率の高いことが、新しい研究で明らかにされた。
研究では、米オハイオ州で1999~2001年に職務中の損傷により慢性腰痛となった労災認定患者の中から、脊椎固定術を受けた患者725人、運動や理学療法などの保存療法を受けた患者725人を無作為に選出。2006年の研究終了時、治療成績(アウトカム)のほとんどの項目で外科手術群の方が劣っており、2年後に職場(仕事)復帰していたのは手術群では4分の1、非手術群では3分の2だった。永久的な障害に至った患者は手術群では11%、非手術群では2%であった。

詳細はLink先をみて頂くとして、これだと『脊椎固定術』の手術成績はなんだかとても悪いもののようです。
ここで問題なのは『慢性腰痛』の定義です。
英文でもサマリーはchronic low back pain と書いてあり、疾患割合がわかりません。
(現在、Spineはもう購読していませんので現在原文を取り寄せ中です)
慢性腰痛には明らかな器質的疾患がないものも含まれ、その疼痛の原因として心理・社会的因子が関与することは以前から知られています。
従って薬剤のプラセボ効果や認知行動療法などの統合的ケアプログラムが有効なのは以前も本ブログでお話ししたとおりです。
また、報告の中で『脊椎固定術が1990年以降220%増加している』というのも、この手術法はここ20年で急速に進歩し普及したものですから当たり前なのです。
そもそも慢性疼痛にたいして、私自身は脊椎固定術はお勧めしません。
強い神経症状がありそれが脊椎の不安定性に起因しているものや外傷による脊椎骨折が一般には適応でしょう。
また“手術をおこなったもの=手術適応”“保存療法選択=手術非適応”というのが一般的な認識ですから、リサーチ・プログラム自体の信頼性に?がつくように思います。
『Spineはきわめて権威ある雑誌』と書きましたが、毎回信頼性の低いものが幾つかあるのも事実です。
(今回のものは未読ですので、あくまで一般論です)

この論文の教訓としては『手術適応はしっかり判断しようね』ということでしょうか。

先日市の保健師さんとの食事会で『牛乳は毒だとA先生から聴いたのですが本当ですか?』と尋ねられました。
その時にお答えしたのは『意見は2つに分かれます』ということです。
一つのテーゼには必ずもう一つのアンチテーゼがあります。
要は、自分できちんと吟味することが大切なのです。

私が加盟している日本抗加齢学会の学会誌には毎回誌上ディベートがあります。
今までのテーマには次のようなものがあります。
「水をたくさん飲むべきか?」
「運動は食前?食後?」
「牛乳は飲むべきか?」
「水素水は体によいか?悪いか?」
「アラキドン酸の是非」
「日焼けは体によいか?悪いか?」
「低体温はアンチエイジングの長寿の指標か?」
「ビタミンC大量点滴療法の是非」
いずれも、その道の権威の先生が一方の立場でのみ誌上ディベートを繰り広げるとても面白いコーナーです。
(本当は良い面も悪い面もあるけどね・・・とお考えの先生方が一方の極端な立場で議論します)
これを読んでいるとそれぞれの利点・欠点がある程度明確になり、『結論を出のはあなた!』ということです。

今日の結論としては、何事も頭ごなしに否定するのはやめようということ、
あなたは頑固になっていませんか?



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by ccr-net | 2011-03-06 19:46 | 整形外科
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