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アシネトバクター騒動に想う

感染症治療の原点を見つめよう、大切なのはアウトカム

以前このブログに帝京大医学部付属病院での院内感染問題を考えると言うタイトルでセイフティー・マネージメントの観点から、現在も連日報道されているアシネトバクター騒動について私見をアップしました。
今回は、感染管理の点からアシネトバクターについて少し考えてみました。

そもそも、アシネトバクターってなんでしょう?
アシネトバクター(Acinetobacter)はグラム陰性桿菌で、自然環境に広く分布しています。
健康な人の皮膚にも存在することがありますし、感染力の弱い弱毒菌です。
けれども、もともと抗菌薬に対し耐性の多い菌で、それがさらに耐性をつけたのが今回の『多剤耐性アシネトバクター』です。
但し、本来が弱毒菌ですので問題となるのは免疫力の弱いいわゆるコンプロマイズド・ホスト(日和見感染者)です。ですから、アシネトバクターの存在は、比較的医療現場では普遍的なものだと考えられています。
本日も、あちこちの医療機関でアシネトバクターが見つかったという報道が見られますが、これってどの程度問題なのでしょう?
アシネトバクターが見つかったということは、その施設がきちんと細菌培養検査をおこなっているということで、『アシネトバクター=いいかげんな感染管理』ということにはなりません。
だって、きちんと検査をおこなわなければ発見されないのですから・・・

と、ここまで書いたとき今日の日経メディカル オンラインに不毛なアシネトバクター騒動とその背景にある誤解というタイトルで尊敬する青木先生が正論を書いておられるのを発見しました。
この中で、青木先生は『感染症は耐性よりも、生命や健康のアウトカムが問題』と書いておられますが、まさにその通りです。
そもそも、今回の騒動の発端となった帝京大学死亡例の原因が感染症なのか否か特定されていません。
『アシネトバクター=悪魔のように恐ろしい菌』という、前提の元に、まるで魔女狩りのような状態です。
アシネトバクターについては、上記青木先生の記事をお読みになるとほとんどの皆様が『なーんだ、そういうことか・・・』とほっとされるのではないでしょうか。

現在おこなわれているような魔女狩り状態は、『培養しない』『感染者は受け入れない』といった医療の萎縮に繋がるのは間違い有りません。

Twitter上では、医療関係者の間で『多剤耐性菌は社会全体(院外)の問題が川上で、院内は川下。』『厚労省が目指しているのは、いったいいつの時代の感染管理か?』というのが主流となっています。

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感染症に対する正しい認識ときちんとした感染管理、

その両方をおこなうことが大切です。





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by ccr-net | 2010-09-13 22:14 | 感染管理
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