医療崩壊の原因 その1
なぜ休日診療・時間外診療を開業医がしなくなったのか?
本日は、朝より創傷管理1名・疼痛管理1名、17時より創傷管理1名の診療を行いました。
日曜日にこうした診療をおこなうと患者様からは大変感謝されるのですが、本来は休みだから傷を見ないというのはおかしなことです。
振り返って考えてみましょう。
私達が子供の頃、開業医の先生方(町のお医者さん)はほとんどが入院施設があり、往診や夜間診療・休日診療をおこなっていた記憶があります。
入院があれば24時間看護師もいますし医師も呼ばれれば自宅からすぐにでてきていました(もしくは自宅が一緒)。
それが、〝ベッドは不要〟という大号令の基、有床診療所の経営は成り立たなくなり、無床診療所ばかりになってきたのです。
これは国の方針です。
医療費の削減=ベッドの削減(無駄な入院はやめよう)ということで、有床診療所は次々に閉じていきました。
従って、時間外診療(夜間診療)をしようにもスタッフがいないので、開業医は時間外診療をおこなわなくなりました。
ビル診が悪いのではなく、医師が開業をする場合、他に選択肢がないのです。
従って、夜間具合が悪くなった方は、公的病院の救急外来に行くしか方法がなくなったのです。
一方、救急外来をおこなう公的病院はどうでしょう?
今まで町のかかりつけ医でみてもらっていた軽症の患者様が救急外来に殺到します。
ここに過重労働が生まれます。
救急外来にかかわる医療スタッフの労働は、一般の方がお考えになるより遙かに過酷です。
私自身、7年前に開業するまで整形外科部長として救急医療の前線で働いていましたが、救急がなくとも朝7時に病院へ出向き夜10時に帰宅していました。
何もない日で15時間勤務です。
これに救急呼び出し・緊急手術が加わります。
36時間勤務はざらです。
管理職ですので時間外手当などは当然全く出ません(そうでない病院もあるでしょうが)。
他の平の医員やレジデント・看護師は少しは手当がでますが微々たるものです。
明らかに労働基準法違反です。
手当は当然出すべきなのですが、出せば赤字で病院経営は成り立ちません。
救急医療はどこの病院も100%赤字です。
診療報酬の設定がそうできているからです。
誤解がないようにお伝えしますが、私の勤めていた病院は全国でも屈指の黒字病院です。
けれどもその採算ラインは、ベッド稼働率95%で維持されています(現在はもっと悪いかもしれません)。
全国屈指の黒字病院でさえ、時間外手当が出せず経営に余裕がないのです。
それでも現場の医療スタッフががんばっているのは高い使命感と目的意識に支えられているからです。
けれども、昨今の医療訴訟や医療を取り巻く環境は、かれらに十分な評価をしてくれません。
お金の問題ではないのです。
がんばっているのだから、せめて正当な評価を社会的評価をしてほしい。
それが、現場スタッフのいつわらない気持ちでしょう。
従って評価が得られないと、燃え尽きて現場を離れる医療職が当然出てきます。
誤解を恐れずに言えば、現在の医療崩壊のきっかけは明らかな政策ミスです。
開業医を叩き、余裕を奪った。
結果、時間外診療をおこなう町のお医者さんはいなくなり、救急外来に過重負担がかかった。
私自身が救急の現場を離れたのは、別に燃え尽きたわけではありません。
自分自身のやりたい医療を制約のない環境でやってみたい・・・
自分でしかできない〝かかりつけ医〟になりたい・・・
そういう気持ちで7年前に開業し、現在の新施設でようやく自分のやりたいことの準備が整いました。
現在再び、開業医=悪玉論がじわりとでてきています。
既に多くの開業医がつぶれ、地域のかかりつけ医がなくなる方向にあります。
開業医をつぶしてはいけません。
寧ろ、昔のような余裕有る開業医(24時間みるかかりつけ医)を育てるべきです。
それが、現在の医療危機を救うもっとも効率的で確実な方法です。
長くなりました。
続きは次回。
明日は勤労感謝の日ですが、また9時から診療をします。
小松秀樹先生の著書です。
ご参照下さい。
本日は、朝より創傷管理1名・疼痛管理1名、17時より創傷管理1名の診療を行いました。
日曜日にこうした診療をおこなうと患者様からは大変感謝されるのですが、本来は休みだから傷を見ないというのはおかしなことです。
振り返って考えてみましょう。
私達が子供の頃、開業医の先生方(町のお医者さん)はほとんどが入院施設があり、往診や夜間診療・休日診療をおこなっていた記憶があります。
入院があれば24時間看護師もいますし医師も呼ばれれば自宅からすぐにでてきていました(もしくは自宅が一緒)。
それが、〝ベッドは不要〟という大号令の基、有床診療所の経営は成り立たなくなり、無床診療所ばかりになってきたのです。
これは国の方針です。
医療費の削減=ベッドの削減(無駄な入院はやめよう)ということで、有床診療所は次々に閉じていきました。
従って、時間外診療(夜間診療)をしようにもスタッフがいないので、開業医は時間外診療をおこなわなくなりました。
ビル診が悪いのではなく、医師が開業をする場合、他に選択肢がないのです。
従って、夜間具合が悪くなった方は、公的病院の救急外来に行くしか方法がなくなったのです。
一方、救急外来をおこなう公的病院はどうでしょう?
今まで町のかかりつけ医でみてもらっていた軽症の患者様が救急外来に殺到します。
ここに過重労働が生まれます。
救急外来にかかわる医療スタッフの労働は、一般の方がお考えになるより遙かに過酷です。
私自身、7年前に開業するまで整形外科部長として救急医療の前線で働いていましたが、救急がなくとも朝7時に病院へ出向き夜10時に帰宅していました。
何もない日で15時間勤務です。
これに救急呼び出し・緊急手術が加わります。
36時間勤務はざらです。
管理職ですので時間外手当などは当然全く出ません(そうでない病院もあるでしょうが)。
他の平の医員やレジデント・看護師は少しは手当がでますが微々たるものです。
明らかに労働基準法違反です。
手当は当然出すべきなのですが、出せば赤字で病院経営は成り立ちません。
救急医療はどこの病院も100%赤字です。
診療報酬の設定がそうできているからです。
誤解がないようにお伝えしますが、私の勤めていた病院は全国でも屈指の黒字病院です。
けれどもその採算ラインは、ベッド稼働率95%で維持されています(現在はもっと悪いかもしれません)。
全国屈指の黒字病院でさえ、時間外手当が出せず経営に余裕がないのです。
それでも現場の医療スタッフががんばっているのは高い使命感と目的意識に支えられているからです。
けれども、昨今の医療訴訟や医療を取り巻く環境は、かれらに十分な評価をしてくれません。
お金の問題ではないのです。
がんばっているのだから、せめて正当な評価を社会的評価をしてほしい。
それが、現場スタッフのいつわらない気持ちでしょう。
従って評価が得られないと、燃え尽きて現場を離れる医療職が当然出てきます。
誤解を恐れずに言えば、現在の医療崩壊のきっかけは明らかな政策ミスです。
開業医を叩き、余裕を奪った。
結果、時間外診療をおこなう町のお医者さんはいなくなり、救急外来に過重負担がかかった。
私自身が救急の現場を離れたのは、別に燃え尽きたわけではありません。
自分自身のやりたい医療を制約のない環境でやってみたい・・・
自分でしかできない〝かかりつけ医〟になりたい・・・
そういう気持ちで7年前に開業し、現在の新施設でようやく自分のやりたいことの準備が整いました。
現在再び、開業医=悪玉論がじわりとでてきています。
既に多くの開業医がつぶれ、地域のかかりつけ医がなくなる方向にあります。
開業医をつぶしてはいけません。
寧ろ、昔のような余裕有る開業医(24時間みるかかりつけ医)を育てるべきです。
それが、現在の医療危機を救うもっとも効率的で確実な方法です。
長くなりました。
続きは次回。
明日は勤労感謝の日ですが、また9時から診療をします。
小松秀樹先生の著書です。
ご参照下さい。
by ccr-net
| 2009-11-22 17:38
| 医療